「不動産目当てのM&A」コロナでじわり広がる訳 保有不動産に重きを置いた企業買収が増加

2021-05-10 11:47:45

大阪・地下鉄なんば駅付近で建設が進む「アパホテルなんば心斎橋西」。2021年5月に開業を控えるこのホテルが立つ土地は、アパグループが2018年に駐車場運営企業の買収に伴い取得した土地だ。

通常の買収事案とは少し事情が異なり、売り手企業が営む事業よりも、むしろ保有する不動産に取引の主眼が置かれていることが特徴だ。

大きな節税効果

「地方銀行から案件が持ち込まれている」。不動産仲介大手、三菱地所リアルエステートサービスの中矢一国・流通事業グループアドバイザリー部長はそう話す。

同社は2020年4月に不動産M&Aを仲介する専門部署を創設。成約実績はまだないが、1年弱で約40件の相談を受けた。売り手企業の多くは地方都市の老舗で、うち3分の2は後継者問題を抱えた企業だという。

M&A案件が専門の仲介会社ではなく、あえて不動産仲介会社に持ち込む売り手企業は、複数の不動産を所有しているケースが多い。「ホテルや旅館など宿泊施設を筆頭に、工場やビルなどさまざまな物件を持っていることがある」(中矢氏)。

物件を個別に売るよりも、物件を保有する法人ごと売却するのが不動産M&Aのキモ。M&Aといっても事業承継が行われず、従業員は全員離職し、買収後は法人も解散。残るのは売り手企業が元々保有していた物件だけ、という取引も少なくない。

譲渡企業の目的は節税効果だ。物件を個別に売却してから法人を解散する場合、まず物件売却益に最大約35%の法人税が課せられ、課税後の利益を分配すればさらに最大50%の所得税がかかる。売却益が10億円なら、最終的な手残りは3億円強にまで縮んでしまう。

一方、物件を保有する法人ごと身売りをすれば、同じ売却益10億円は株式譲渡所得として扱われる。課税は最大で約20%に留まり、8億円が手元に残る計算だ。事業承継に悩む企業は社歴が長く、不動産の簿価も低いため多額の売却益が計上されてしまうことから節税効果は小さくない。

買い手の意欲も旺盛だ。「昨春はコロナ禍の影響で取引がストップしたが、不動産市況の高止まりを見て、秋頃から再びM&Aの案件が増えてきた」。不動産開発や既存物件の再生を手がけるトーセイの米田浩康執行役員はそう語る。

同社は2016年以来、資産管理会社など4社を買収し、計約30物件を取得。M&Aによって取得した物件は、収益性を高めたのちに投資家に売却する。2017年にはM&Aの専門部署を設置し、物件取得ルートの1つとして位置づける。

通常の物件売買と比べて不動産M&Aは法人の資産査定に時間を要するうえ、ポートフォリオを丸ごと取得するため流動性の低い物件も一緒に抱えるリスクを伴う。それでも、これまで市場に流通しなかった物件が取引に出る機会でもあり、競争は意外にも激しい。

「まず不動産価格をベースに入札が行われ、優先交渉権を得た企業が詳細を詰めていく。ファンドなどが高値を提示したことで、価格が合わず取得を見送った案件も少なくない」

マッチングサイトも登場

不動産M&Aを専門に取り扱うマッチングサイトも登場した。2020年8月、不動産M&A専門のマッチングサイト「ReeMA(リーマ)」を立ち上げた運営会社リーマの竹口淳社長は「M&A仲介会社が扱わない、資産規模数億円程度の法人のM&Aを支援していきたい」と話す。サイト上ではこれまでに、20組のマッチングが成立した。

最近では資産が膨らんだ個人投資家からも身売りを持ちかけられるという。「2015年の税制改正により相続税が増税されたことから、法人を設立して物件を移す投資家が増えた。それが今、資産を入れ替えようと法人ごと売却する動きが加速している」。

图片关键词

不動産業界にとって、1~3月は物件取得の好機だ。一般企業が決算を意識し、保有する不動産を売却して含み益を実現させるからだ。

飲食など打撃を受けた業種のオーナーが、本業の赤字の補填のため資産管理会社こと売却するケースもある。ところが、今年は危機対応融資によって資金繰りに窮する企業が少なく、「期待していたほど物件が出てこない」(信託銀行幹部)との声もある。これまであまり認知度が高くなかった不動産M&Aだが、コロナ禍で加速する可能性もある。